060 咲世子

ゆっくりらせん階段上る

 青く深い大空に浮かぶ綿雲がゆったりと流れるような時間が過ぎる。ポワッとしたふんわり感が、綿雲の上に体を委ねるような心地よさを誘う。

18歳で上京

 「七つ上の姉に勝手に応募された」のが10歳の時。週に1度レッスンに通い始め、キャリアをスタートさせた。中学時代は「東京に通いながら」ローティーン向けファッション雑誌「nicola(ニコラ)」のモデルとして活躍するなど、芸能界を歩き始めた。

 高校卒業と同時に「やってみよう」と生活の拠点を東京に移して本腰を入れる。「知らない土地でポツンと一人になった。環境に慣れるまで時間がかかった」。18歳の心は寂しさでうずもれることもあったが、「上京当初は実家には帰らないと決めてました」と、強い決意で寂しさと甘えを封印した。

 上京して5年目。「今は芝居をやってます」とモデルから役者に転身した。「仕事はぼちぼちです」と、自分のペースを崩さずゆっくりとした歩幅で歩き続ける。「20歳を超えてがつがつせずにゆっくりやっていこう」という気持ちになった。

咲世子新世界から飛躍

 新世界を舞台にした公開中の映画「ソウル・フラワー・トレイン」ではメーンキャストでストリッパーのユキ役を熱演した。撮影が行われたのが一昨年の3月。「過酷なスケジュールで追われた感があった」と新世界を駆け抜けた時間を振り返った。

 ユキは大分から大阪の大学に進学し、親に隠れてストリップ劇場で踊り子とし働いているという役どころ。「上京して親に心配かけないように、素直になれないところが似ている」とユキの感情と寄り添った。役作りのためにストリップ劇場にも足を運んだ。「あれはパフォーマンス。体を引き締めないと」とダイエットを始め、バレエのレッスンを増やして撮影に挑んだ。

 「大きな役は初めて。自分に合う作品に出会えて一つの大きなステップになった」と新世界から飛躍を誓う。

大阪が好き

 「東京はいろいろな人がいるから面白い。東京に出て良かったと思う」と笑顔が揺れる。「東京では自分を見失わないようにしなければ、流される」と、らせん階段を1段ずつ上るように、少しずつ経験を積んできた。「でも、やっぱり大阪が好き」

 (ヘアメーク 増谷祐佳)

咲世子(さよこ) トライストーン エンタテイメント
大阪府出身。TVドラマ、CM、舞台、映画などに出演。雑誌などスチールでも活躍中。